Tsuyoshi-Soma先日7月26日に、プロトレイルランナー・相馬剛選手がマッターホルンへの登山中に滑落、遭難してしまったという記事がFuji Trailheadに掲載されました。

記事によれば、生存の可能性は極めて低いとのこと。このニュースを聞き、ただただ驚きを隠せませんでしたし、「生存の可能性は極めて低い」という残酷なフレーズに血が冷たくなりました。

相馬選手と言えば、日本のトレイルランナーの中でも5本の指には入るのではないかという著名なトレイルランナーです。僕が最初に彼を認識したのは、NHKによる第一回UTMFの放送だったと記憶していますが、なんとも無口かつ無愛想で、頑固でありつつも芯の強い侍のような印象を受けたのを覚えています。

それから時折レースなどでお見かけすることがあり、先日のUTMF/STYのゴール後、ゴール付近で休んでいる相馬さんを発見し思わず声をかけてしまったのですが、その数カ月後にこんなことになるとは・・・

ただただ、ご無事を祈るばかりです。

しかし・・・ほんとにこのニュースを聞いてから・・・とにかくなんとも言えない気持ちになり、以前同じチームのトレイルランナー・小松さん(a.k.a.ぴょん吉)に教えてもらった相馬さんの手記を思い出しました。

2007 日本山岳耐久レース ~ハセツネ~と題された文章は、当時の相馬さんの心情を、本人自らの手で生々しく綴られています。まだ読んだことがないランナーは、ぜひ読んでみてください。

スタートまであと1時間、私は会場に置かれた「ハセツネカップ」の前に立ち、華やかではないが伝統や格式が感じられるそのカップを見つめていた。あと10 時間も経たないうちに、自分がこのカップを掲げる人間になることを思い描いてみたものの、なぜか気持ちがフワフワとして、いまひとつ現実感が沸かない。 緊張や不安も驚くほど感じなかった。スタート直前になっても気持ちの昂ぶりが起こらなかったため、強引に集中しようといろいろ試みたが、それでも気持ちは 落ち着いたままだった。 走りたい・・・こんな純粋な気持ちで、この日を迎えることができ素直にうれしかった。
このようなレース前の氏の心情や、
日の出山山頂から、再び奥宮選手がスパート。すごいスピードだ。あっという間に100m以上離され、最後の勝負にでていることがはっきりと伝わってきた。 本当に強い選手だ。レース前、心の片隅では、どんな展開になっても勝てる自信があったし、タイムも最低でも8時間を切りたいと考えていたが、そんな傲慢な 気持ちを見透かされたような状況に気持ちが折れそうになる。 もう一度、自分を見つめ直した。前半から中盤はトレイルとの勝負であった。後半は奥宮選手との勝負。そして、最後は自分との勝負だ。結局、僅かに残った自 分の力をゴールまでに出し切るしかない・・・そう思ったら、なぜか、とても清々しい気分になった。
レース中の相馬選手の思考が克明に記載されています。

僕が好きなのは特に下記。すごくよく分かる、とは言えないけれども、なぜ僕らが登山家ではなくトレイルランナーなのか、ということを、その魅力のヒントを書いてくれているように思います。
私たちのようなトップ選手は競技性を追及するあまり、トレイルランニング本来の魅力を感じていないと言われることがあるが、極限状態だからこそ感じること もあると思う。 このまま走り続けたら、自分が山に溶けてしまいそうな感覚・・・この時、感じた自然との一体感は、これからの私に新たなモチベーションを与えてくれるだろ う。またいつか、この感覚を味わいたい。さらにトレイルランニングが好きになってしまった。
また以下のようにも。
1年前、私はそこそこ速いがごく平凡な選手だった。そんな私でも1年間のトレーニングでハセツネに勝てる選手になれた。時間は誰にとっても平等に流れるも のだから、これから1年、真剣にトレーニングすれば必ず「なりたい自分」になれると思う。多くの選手に可能性があるはずだ。

今回のこの滑落事故からも生還して、ぜひこのような生々しい文章を書いてほしいと本当に思っています。どうかご無事で。